例えば、顎関節に異常があり、関節の位置が少しずれていたり、痛みで、正常な位置に戻らなかったりすると、かみ合わせが変わります。比較的短期間でも、顎関節に異常があると、嚙み合わせが変わったりすることはよくあります。よって噛み合わせの異常を考えるのにあたって、顎関節が正常か異常かを診断することが重要です。
噛み合わせの
治療の話の前に
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嚙み合わせと顎関節の
密接な関係をお話しします
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まずは、顎関節に明らかな異常がないか症状を確かめてみましょう。
〜あなたもこのような症状ありませんか?〜
- お口を開けたときに、ガクっと音がなる
- 痛い
- お口を開けるときに、下顎がまっすぐではなく、
どちらかに歪みながら開く
- じゃりじゃり音がする
- 顎を左右にとか前にとか動かしたら痛い、
音がする
- こめかみまわり・耳の下・えらの下・顎の先の裏・首筋・
こめかみの上等を押したら痛い
- 片頭痛・肩こり
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これらの症状があれば、
すべて顎関節症の可能性があります
顎関節症は意外と怖い病気です。自然治癒はあまりなく、いったん症状がなくなっても再発することが多いです。思い当たる節がある方も多いのではないでしょうか?
また、じゃりじゃり音がするようになると、顎関節の靭帯を壊して、顎関節頭(顎関節の最上部の骨の部分)をすり切り始めている所見です。ここまでくると、症状がなくなることはなく、基本進行していきます。このじゃりじゃりという音は、言葉にするとこういう音ということですので、感じ方は人によって違いますので、注意が必要です。
顎関節症の原因とは
顎関節症の原因は、すべてではないですが、噛み合わせが多いといわれています。ほかには、外傷・ストレス・姿勢・頬づえ等の悪習癖等が挙げられます。
しかし外傷を除いて、これら単体でなるとは考えにくく、やはりベースにはかみ合わせが多く関与していると考えられていて、治療目標も他の原因も取り除きながら、噛み合わせを治すということになります。
お家でできる簡単な
噛み合わせが
悪いセルフチェック方法
- 目をつむります
- 座った姿勢で特に背筋をきちんと伸ばすということでなく、普段のリラックスしている状態(少し背筋が曲がっていてもそれがいつもの状態であるからその状態で)にします
- お口をゆっくり開けて、縦に二本くらい指が入るくらいに開けます
- そこからゆっくりと、噛み合わせのことを考えることなく、自然な感じでお口を閉じてきます。
- 上と下の歯が最初のあたるところで、止まってそれが左か右か、前か、後ろか、記憶します
- それからまたゆっくりと、噛み合わせて、ずれずに噛めるか、ずれて咬むのかそしてずれるなら、左右・前後どちらにずれるか確認します
- これを3回ほど繰り返します
いかがでしたか?
毎回同じところが最初にあたりましたか?
それともいつも少し違いますか?
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最初にあたったところから、噛みこんでいったときに、全体がすっと咬みましたか?
それとも顎が左右、前後どちらかにずれていきましたか?
また、最初から最後まで、前歯が少しも当たらないということは、ありますか?
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当てはまるパターンは
ありますか?
- 毎回同じところが最初にあたり、
左右前後ほぼ同時にあたり、
それから噛みこんでいったときに
ずれずに全体が当たってくる。 - ほぼ正常です。
- 左右どちらかが先にあたる。
それから咬んでいったら
反対側にあたる。 - 早期接触の可能性があり、顎関節の正常な位置で、全体に咬めていない可能性があります。
- 左右どちらかが先にあたる。
それから咬んでいったら
反対側にあたる。
またその後咬んでいくときに
顎がずれて咬んでいく。 - 早期接触でかつ顎関節周囲筋、頸部周囲筋ともに、異常な運動をさせられている可能性があります。
- 毎回最初に
あたるところが違う場合 - 顎関節周囲筋が緩んだり、傷んでいたり、拘縮しているため、安定しない可能性があります。毎回違うところにあたるため、安定したかみ合わせにならないので、咀嚼時、安静時にも負担が大きくなりがちです。
- 顎を意図的に大きく前にずらして
ようやく前歯があたる。
無意識ではあたらない。 - 安静時前歯部開咬のおそれがあります。
- 顎をどのようにずらしても、
前歯が当たらない - 前歯部開咬のおそれがあります。
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いかがでしたか、
1から6のどれかに当てはまりましたか?
1、2はほぼ正常です。
2の場合は、今後悪化してくる可能性があるので、ご相談ください。
3、4は現在顎関節が悪化していっている可能性もあります。
なるべく早くご相談下さい。
5、6は不正咬合の開咬状態が予想されます。
矯正治療の可否を含めてご相談下さい。
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次に顎関節症の治療法について説明します
顎関節症の治療
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顎関節症の治療は、
ほかの口腔内疾患にならないように予防することでもあります。
例えば、顎関節症(お口が開きづらかったり、どちらか片方で噛むのが痛かったり、どちらかの顎をかばってお口を開けている状態)を放置していると、片側咬みの癖がついて、そちらの歯ばかり、虫歯が進行したり、強く使いすぎることで、歯周病が進行したりします。
お口の予防の観点からも顎関節症自体も早期発見、早期治療を心がけて、バランスよく歯を使えるようにしていきましょう。
症状の一例
- 痛みが出ている場合
(対症療法・保険診療) - 夜間マウスピースを作成し状況に応じて消炎鎮痛剤を併用しながら痛みを軽減させる治療を行います。痛みが軽減された場合、2に移行します。
- 痛みのない場合
- 原因追及の審査診断を行い咬合治療の必要性を診断します。
咬合治療が
必要だと診断された場合
3つの咬合治療
咬合調整
早期接触をしている歯を特定し、過不足なくその歯を削合したり、接触のない歯を特定し、コンポジットレジンで盛り上げて、接触を与えたりして、顎関節に負担のないように、かみ合わせを調整します。
2の矯正治療や、3の全顎的補綴治療よりも大幅な変更が必要のない場合に適応できます。
手順としては、CRバイト(顎関節にとって正しい噛み合わせの位置をDowson法等を用いる)を採得し、上下噛み合わせの模型を採得します。
模型上で早期接触部位と、接触のない部位が特定されるので、最大のかみ合わせが取れるように、模型上で削ったり盛ったりして、確認後口腔内で実践します。
矯正治療
顎関節を基準として、早期接触のない全体に咬める位置にすべての歯を移動して並べることによって咬合調整のみで困難な場合に適応します。
- ワイヤー矯正
- 従来から行われている方法で、歯にブラケットを接着させて、それにワイヤーを通し歯を並べていきます。
- マウスピース矯正インビザライン
- 透明のマウスピースを使用し、歯を動かしていきます。
全顎的補綴治療
過去に多くの歯をかぶせている場合で歯のポジションが極端に悪くない場合は、かぶせ物をやり替えて、顎関節を基準として早期接触のないかみ合わせを構築するやり方です。
すべての歯に処置をなんらかの形で加えることでかみ合わせを作るので、早く確実に処置を行うことができます。欠損歯がある場合は、インプラント治療を併用することもあります。
全顎的補綴治療が
必要な患者様の状況
全顎的補綴治療が必要な患者様は、噛み合わせが悪い時期があってそれを治していなかったので、ある特定の歯に負担がかかり、動揺や虫歯の再発が何度かあって、抜歯に至り歯が抜けた後も残りの歯で不安定に噛んでいるもしくは、ブリッジ、入れ歯の鉤歯になっているため、またその歯が負担がかかり悪くなってしまい、、、を繰りかえしている患者様がとても多いです。
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よって噛み合わせが悪いと診断されたら、
まずは、①の咬合調整で治る比較的軽度な状態なのか?
②の矯正治療が必要になる程度なのか?
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それとも、もう矯正治療では難しく、全顎的に補綴治療が必要なのか?を診断してもらって
治療費の兼ね合いも考え、実施していくということになるでしょう。
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問題を先送りにすればするほど、歯がだめになっていくことが多いですし、
治療の選択肢が狭まっていくことがありますので、注意が必要です。
全顎的補綴治療を将来避けるために、矯正治療で各歯のポジションを良くして、(特定の歯に負担がかかりずらい、全体で負担するためのかみ合わせ)微調整は、咬合調整で行います。当院で矯正治療を行った場合の最後の微調整は、矯正治療費の範囲にはいっていますので、ご安心ください。
当院で咬合調整を行う方の一部は、他院で矯正治療を行った患者様がおられます。矯正治療が終了しているのにもかかわらず、左右で均等に咬めていなかったり、するので、治療をしてほしいと来院されます。矯正治療は矯正治療のみで、完了することの方が少ないので、矯正治療を完了した後に、しっかり咬合調整を行い安定させることが重要です。